4月は入社や転職などで、新たな組織で迎える方々も多くいらっしゃるかと思います。この4月スタートというのは世界の中でも日本独自の文化であり、国の会計年度の開始時期が数度の試行錯誤を経て1886年に4月に定まり、企業や学校がそれに倣って定着化しました。当時は主な納税者が稲作農家であり、秋の収穫後に換金をし、納税を受けた後に翌年度の予算編成を行う期間を踏まえ4月スタートになったと言われています。
さて日本の人材マネジメントにおいて「オンボーディング」という言葉が徐々に普及してきました。弊社が「オンボーディング」という言葉を知ったのは今から12年前の2010年のことでした。北米では当時から新入社員の早期戦力化を目的とした一連の取り組みをそのように呼んでいました。人材マネジメントにおける北米発祥の横文字ワードが日本に輸入される際に、内容によっては曲解されて定着化するものもありますが、「オンボーディング」はそのままの意味合いで用いられています。
組織行動学の世界では、個人が新しい組織に適応するプロセスのことを「組織社会化」と呼びます。組織社会化研究は1960年代に、キャリア理論の創始者であり組織心理学の父とも呼ばれるエドガー・シャイン博士が論文執筆したのが始まりのようで、以降日本では1990年代より研究がなされ、近年は日本でも特に注目を浴びている領域です。
そのプロセスの中で、組織の期待に応えるために自ら積極的に考えたり行動を起こしたりする自律的な行動のことを「組織社会化におけるプロアクティブ行動」と呼びます。プロアクティブ行動の例として「必要な情報を積極的に収集する」「フィードバックを積極的に求める」「周囲との関係性を積極的に収集する」などが研究論文に提示されていますが、それ以外に「ポジティブフレーミング」が挙げられています。
同じ情報であっても、焦点の当て方によって人はまったく別の意思決定を行うという認知バイアスのことを認知心理学の世界では「フレーミング効果」と呼びますが、「ポジティブフレーミング」は、例えば「あと半分しかない」ではなく「あと半分残っている」、「80%の確率で失敗する」ではなく「20%の確率で成功する」、「やる事がまだ一つ残っている」ではなく「やる事がもう一つで終わる」といったポジティブな捉え方をすることであり、これが自律性の発揮そのものであるということです。