米国AI動画面接規制法について
人工知能(AI)の社会実装が普及期を迎えています。人材獲得領域についても複数のAI面接ソリューションが開発・提供され、日本の主要企業も次々にAI面接の活用に踏み切っておりますが、テクノロジー活用先進国である米国では、AI面接のアルゴリズムに対して人種差別の懸念を訴える動きがあり、これを規制する法律が各州で既に成立・施行されています。
世界初のAI動画面接規制法は2020年1月、米国イリノイ州で施行されました。AI面接が従来分析してきた要素は「顔の表情」「声のトーン」「単語」「文章」「文脈」などでしたが、この中で「顔の表情」に基づく視覚分析機能が規制対象となりました。
またこの流れは既に欧州に波及しており、2021年4月に欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会が、人材獲得領域を含めたAIの社会実装に対する規則案を公表し、2022年後半の発効を目指しています。日本では2021年7月に経済産業省が「我が国のAIガバナンスの在り方」を、また2021年8月に経団連が「欧州AI規制法案に対する意見」を公表し、今後は日本においてもガイドライン化または法規制化が検討されるでしょう。
AI倫理問題をクリアするために、AI面接ソリューション提供企業は「説明可能なAI」の開発が求められます。具体的に実施すべき対策は、米国の動向を踏まえると「視覚分析機能の削除」に加えて「言語分析機能の高度化」「AIアルゴリズム監査の受審」「AIモデル開発指針の情報開示」「第三者倫理委員会の設置」などが上げられます。
日本市場におけるテクノロジー活用については、概ね5年遅れで米国の潮流が押し寄せるという経験則がありますが、AI選考導入済または導入を検討している企業においては、グローバルの動向や、日本の当局における動向を注視・留意する必要があります。