録画面接におけるChatGPTの使用にどう向き合うか?

昨今、世界中で録画面接のシステムが開発され、多くの学生が就職活動で利用していることと思います。しかし、採用担当者の方には「この学生の話していることは、ChatGPTなどのツールを使用して作った内容ではないか?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

HireVue社のデータサイエンスチームの調査レポートの中から、録画面接のChatGPT利用(面接の回答内容を作り上げること)についてご紹介します。

■ChatGPTを使ってもスコアは変わらなかった

HireVue社のデータサイエンスチームは、HireVueのAIアセスメントの設問への回答作成にChatGPTを使用し、テストを実施しました。面接の質問だけを与えた場合、ChatGPTはコンピテンシー評価で平均的なスコアの範囲に収まり、プロンプト(AIに対する指示文章)を追加しても回答内容は一般的な内容になり、実際の職務経験や教育課程については、人間の手でアレンジする必要が出ました。

また、ChatGPTブーム(2023年11月頃)の前後で、AIアセスメントの平均スコアをモニタリングしても、候補者全体のスコアに上昇傾向や変化は見られませんでした。このことから、AIアセスメントで候補者がChatGPTを使っても、他の候補者と比べて優秀・有利な立場になることはできないはずだとHireVue社は述べています。

■ChatGPTによる回答を使用しているかどうかを見分けるには

HireVue社は、録画面接への回答中に、ChatGPTによる回答を使用している候補者の特徴・傾向を以下のとおり挙げています。

・候補者が経験してきた具体的なストーリー・情報が不足している。
・質問に即興で回答する時は、「あー」「えーと」「うーん」という言葉(”フィラー”と言われます)を使う傾向が見られる。
・日常では使わないよそ行きの言葉(例「●●を促進」「新たな道を拓く」)を使う傾向が見られる。

日常的な会話とは少し異なる話し方・様子が見られるので、おそらく読者の皆さんも録画面接を見ると、上記の特徴を感じとれるのではないでしょうか。

■学生に「ありのままの自分」で録画面接に臨んでもらうには

ChatGPTによる回答を使用しているかどうかを見分ける方法をお伝えしましたが、皆さまとしては、学生にはツールを使わず、素の姿で録画面接に臨んでもらえるような採用プロセスをご検討されるかと思います。いくつかの方法をご紹介します。

  1. 深掘り質問の活用:リアルタイムのオンライン面接や、対面面接を併用し、学生に録画面接で話したことについて深掘り質問をしたり、また、録画面接内で「なぜその行動をしたのか」「どのように考えたのか」を聞く質問を設けることで、ChatGPTによる回答を使用していない候補者かどうかを見ることができます。
  2. 個人経験を重視した質問の利用:「東京にある窓の数を推定してください」のように、実際の数字に基づいた回答ではなく、学生のスキルや過去の経験を活用させる質問を設けることで、ChatGPTや他の学生から提供された回答の使用を制限できます。この質問に対する思考プロセスや回答の根拠になる個人の経験は、他には代替できないものだからです。
  3. 受検前のメッセージング:ChatGPTの使用を防止するためのメッセージングを受検前に示すことが重要です。学生に対して「サポートを受けずに録画面接を受検することに同意します」のようなメッセージングをすると、学生に不正行為を思いとどまらせることができます。
  4. 透明性の確保:学生がChatGPTを使用するのは、企業から優秀だと評価されるかどうか、内定がもらえるかどうかという不安を感じるためです。この不安に対して、面接の中で学生に期待する態度や採用プロセスを明確に説明し、企業側から透明性を確保することで、学生のChatGPTの使用やその他の不正行為を軽減させることができます。

■おわりに

採用面接の世界にテクノロジーが浸透し、利便性の向上が見られる一方で、テクノロジーを利用した面接攻略のようなテクニックも出てまいりました。録画面接でのChatGPT使用についてはHireVue社も対策の重要性を理解しており、対応を検討しております。採用面接で学生のありのままの姿を見るためには何ができるか、この記事がご参考になれば幸いです。

弊社タレンタは今後とも日本のお客様の採用面接の高度化に向け、テクノロジーとサイエンスの両面からサポートしてまいります。