自律と成長を促進するHRテクノロジーFuel50 特別対談 人材マネジメントの潮流 ~変えるべきことと変えざるべきこと~ (第2回)

Fuel50-eye前回に引き続き、第2回となる守島先生と楠田先生の対談の対談をお送りします。
第1回はこちら

 

 

対談内容サマリー

第1回 ・ シリコンバレーのグローバル企業に学ぶ働き方の変化
・ 日本企業が変わらなければいけない理由
・ ワークエンゲージメントがアウトプットを上げる
第2回 ・ 仕事自律ありきのキャリア自律
・ 価値観の多様化とコミュニケーション変革
第3回 ・ 2種類の心理的安全性
・ 人事が変えるべきことと変えざるべきこと


仕事自律ありきのキャリア自律
楠田:P.F.ドラッカーの「ポスト資本主義社会」という1993年に日本語訳が発売された本の168ページにこう載っています。これまでの生産性向上は仕事のやり方を変えれば良かった。しかし、これからは知的な仕事やサービス産業の仕事が増える。これまでの組織はオーケストラの指揮者がいれば良かったが、これからはジャズバンドだと続けます。これを解説すると、つまりジャズバンドは自律。指揮者はいません。プレイヤーは順番にアドリブでソロを演奏します。トランペット、ピアノ、ベース、ドラムという感じで。P.F.ドラッカーは自律という言葉は使っていませんが、1993年の時点で自律して働くことの重要性について説いています。

守島:今の組織の在り方は、まさにP.F.ドラッカーが言っている階層的な組織です。マネージャーが指示を出し、部下は指示通りの仕事をする。そのアウトプットが上に上がり、まとまって組織のアウトプットになるという組織論の基本。これはマネージャーが全てを知っているという前提では機能します。しかしながら、これからは一人ひとりが自律的に自分の目標を設定して、自分なりにリソースを活用してやっていかなければ新しいものは生まれません。なぜなら、マネージャーは全てを知らない時代に入ったからです。日本は指揮命令の体制でこれまで機能してきましたが、コロナの影響で変化が求められています。

楠田:世界共通すべての産業で、在宅で仕事ができる人は真の自律的な働き方が求められるようになってきたということですね。在宅で仕事ができる人は、飲食など在宅で仕事のできない人の上に成り立っているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

守島:今在宅ができないと思われている仕事のかなりの部分は人間なしでできると思います。レストランや旅館やホテルだってロボットで物理的に回すことは可能だと思います。マネージャーが遠隔で指示をして、実際にお客さんには会わないという形態が進むでしょう。製造業も徐々にデジタル化が進んでおり、

サービス業もテクノロジーとロボットが揃えばリモートワークが可能になるでしょう。それを本当に拒んでいるのは私たち消費者なんですよね。

楠田:コロナの影響で、本当の第四次産業革命が世界同時スタートになったということですね。

守島:まさにそうです。世界が同じタイプの危機にされており、顧客の習性も持っている武器もすべて同じです。

楠田:武器も同じだし、消費者の感覚も同じということですね。どのように変えていけるかがカギですね。

守島:働く人たちが自律していく、自分で仕事をしていくことが今後さらに求められます。自律には二つの種類があります。一つは「キャリア自律」です。これは、まさにFuel50が言及していることです。従来の企業主導のキャリアでなく、自らが主体的にキャリアを考え、ギャップを認識し、継続的にスキルを習得することが求められています。もう一つは「仕事自律」です。仕事自律とは自分で決めて、自分の仕事ができるようになることを意味します。これは仕事遂行において自律することで、最初にできるようになるべきですよね。しかしながら、日本は30年くらい前にキャリア自律という考え方が先に入ってきました。キャリア自律を行うため、つまり自分で自分のキャリアを作るためには、まず自分で仕事をできるようになることが前提です。仕事自律ができていない中、いくらキャリア自律といったところで、キャリア自律は絶対に進みません。今回、やっとコロナの影響でリモートワークとなり、自分ひとりで仕事をすることの重要性が認識されてきたので、一つの転換期になるのではと期待しています。

価値観の多様化とコミュニケーション変革
楠田:私の叔父である楠田丘(賃金管理、人事管理、労務管理に関する日本の第一人者。)は、昔から人間の価値は皆同じと言っていました。しかし価値観は違う。そして価値観は変化するものだと。日本でも価値観の多様化という言葉が聞かれるようになりましたが、実際は上司も部下も互いの価値観を理解することのないまま、言葉だけが独り歩きしているようにも感じます。ダイバーシティも深層のダイバーシティに変わってきた中で、価値観というものをどのように捉えていらっしゃいますか。

守島:価値観は働きがいの基本です。「私は人生の中でこれが大切です。」というものがあり、その価値観に紐づいて大切にしたいものが決まっていきます。最近の若い人たちは価値観が多様化しており、その価値観を表現するようになってきています。正確には、昔も価値観は多様だったのかもしれませんが、会社が決めたことに従い、転勤などに対しても総合職であれば受け入れるのが普通でした。しかしながら、今は会社が決めた異動に対しても、反対したりポジティブに捉えたりと意思表示をします。価値観の多様化と表出化という2点が最近の大きな動きのように感じています。

楠田:上司部下間でお互いの価値観を理解することの重要性についてはどのように感じていますか。

守島:ものすごく重要です。日本の職場は「あうんの呼吸」と呼ばれる文化が昔からあります。上司からの「あれどうなった?」という質問に対して、部下が「あれのことですかね。」という会話があります。でも実際はその会話には大きなずれがあることがあります。ただ、同じ場所にいれば認識の齟齬をすぐに修正できました。しかしながら、テレワークやグローバルが進むとそれが難しくなり、齟齬が広がっていきます。価値観だけに限ったことではありませんが、上司部下が相互に何を考えているのか、何を大切にしている人なのかを理解することの重要性が高まるのです。例えば、部下がいきなり会社を辞めますと言ってきたとします。理由を聞くと、妻が働いて自分は専業主夫になりたいと言う。上司は初めて聞きますが、部下は昔からそのように考えていたと。価値観が多様化に伴い、人材マネジメントの観点からもコミュニケーションをどのように取るのかということがポイントになってくるのです。

楠田:私もよく件名もなく、「例のやつどうしましょうか。」というメールをもらいます。このメールを読めなければやっていけない世界です。コミュニケーションにおいて日本語と英語はなにが違うのですか。

守島:日本語と英語は言語だけでなく、そもそも文化が違います。アジアとは異なり、西洋は移民を受け入れ、多民族国家でした。そのような状況下だと、「あれ」を指している範囲が文化によって異なります。そのため明確に言い表すことが必要になります。そのため、考え方がローコンテクストなのです。一方、日本は島国であり、日本語という一つの言葉を使ってきたため文化自体がハイコンテクストです。「あれ」という言葉の指すブレが少ないのです。したがって、言語の使い方も文化によって変わってきます。

楠田:なぜ、今ハイコンテクストなコミュニケーションを日本でも変えることが求められているのでしょうか。

守島:価値観の多様化が大きいですね。また、テレワークやグローバル化が進むとハイコンテクストなコミュニケーションだと話が通じないという事象が起こります。どのように上司部下間のコミュニケーションを良くしていくかというセミナーが今後増えると思います。

楠田:様々な大企業が1on1コミュニケーションを始めました。しかしながら、1on1を導入して、3-5年経った企業にヒアリングをすると、双方の対話の時間であるはずが、上司が一方的に話をしたり、業務の指示の時間になってしまっている。このような状況が現場で起きているという話を多数聞きます。そうではなく、お互いの価値観を言えるカルチャーにしなければなりません。Fuel50にはカードゲームで価値観を見える化してくれますよね。こういうものがあることで、お互いの価値観について話すきっかけになることはいいと思います。そしてこのカードゲームは、ソリティアの操作方法と同じ感覚なので、40代や50代には慣れ親しんでるため、違和感がなく使えますね。

守島:そこでは、信頼関係が大切です。例えば、男性の上司が女性の部下に対して、結婚や出産の予定をと聞くとします。一見セクハラともとれますが、これが実はカギになる問いなのかもしれません。上司がこれから部下を育てていくうえで、上司は部下のキャリア開発のために聞いている可能性があるからです。それにもかかわらず、今はセクハラと言われてしまいます。安心して話し合える文化を作らなければいけません。

(価値観を見える化するFuel50の画面)

楠田:この20年でマネージャーはセクハラ、パワハラ、コンプライアンスなどやってはいけない研修をたくさん受けてきました。そのため、ピープルマネジメントができないマネージャーが増えてきてしまったかもしれません。しかしながら、どれだけ心理的に安全な話ができる関係を作るかというのは重要になってくるでしょう。日本的な心理的安全というのはこのポイントでしょう。

守島:その通りです。個人の問題に対して、コミュニケーションができる関係があることはこれからの職場において大変重要だと思います。これをどこまでできるのかということは、リモートワークやグローバル化、ダイバーシティ&インクルージョンの観点からも重要なポイントです。コミュニケーションがどのようになっていくか。これまでの日本の職場は事実上コミュニケーションがありませんでした。飲みニュケーションはありましたが、お酒を飲むと話の質が下がります。私は「真面目な雑談」と言っていますが、真剣に会社について語れる場があり、言葉に出して話すということが必要なのです。また、人の育成という観点においても、オンラインだとOJTができないという話をよく聞きます。それは、今まであうんの呼吸で背中を見て育てのOJTをやってきたからです。これからは、言葉できちんと教育する、それをプログラム化することをやっていかなければなりません。心理的安全という意味では、話したいこと・話すべきことをきちんと話せること、お互いの大切にしていることを話し合えるような関係づくりが、まず必要でしょう。

第3回に続く


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