work Delight Picks

長い冬もあともう少しという頃になりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。旧暦では2月がお正月です。私の周りでは、立春から「明けましておめでとうございます」と挨拶していたりします。伝統や習わしは、ある時から変わってしまうこともありますが、言葉もその一つです。「乾杯」は言霊的に「完敗」に通じるそうで、私達は知らず知らずの間にマイナスの言葉を話しています。少し古いかもしれませんが、古代からの大和言葉「弥栄(いやさか)」という響きで、皆様の年明けが弥栄えますように…。Work Delight Picks編集室より-

-目次ーーーーーーーーーーー
HR最前線
産業・組織心理学研究 論文紹介
原著論文「職場パワーハラスメントを防止し、ワーク・エンゲイジメントの向上を導く
効果的なアプローチの検証ー組織開発を目的とした管理職向け短期介入プログラムの開発ー」
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報
新しい年の初めに心と体のウェルネス3選
Moment of Delight
仕事や人生で大切にしたい一言

HR最前線

産業・組織心理学研究 論文紹介
原著論文「職場パワーハラスメントを防止し、ワーク・エンゲイジメントの向上を導く
効果的なアプローチの検証ー組織開発を目的とした管理職向け短期介入プログラムの開発ー」

今月は、『産業・組織心理学研究第38巻第1号』に掲載の論文に書かれた内容をご紹介します。

■パワハラとワーク・エンゲイジメントの研究背景
パワハラを受けると、被害者の心身への健康被害が生じることや、ワーク・エンゲイジメントが上がると、従業員の心身の健康、パフォーマンスの面からのメリットがある、というのは皆さんもご存知だと思います。一方、企業のパワハラ対策は義務化されたものの、対策が進んでいると明確には言い難い状況ともいえます。

欧米でのパワハラは「職場でのいじめ・嫌がらせ」と捉えられ、その実態調査や健康への影響等が検討されてきました。一方、日本での研究に目を向けると、パワハラの定義は欧米とはやや異なる部分があるものの、パワハラに関する実証研究が待たれています。日本の産業衛生分野では、長時間労働や過労死問題に関心が寄せられてきましたが、職場の対人関係にまつわる研究は進んでいないとされています。また、職場いじめや嫌がらせ行為は複雑な現象故に、集団単位での介入効果を示す研究は難しいとされてきました。

■パワハラとワーク・エンゲイジメントについて
近年の研究では、職場のいじめの体験が直接的・間接的にワーク・エンゲイジメントを抑制すると報告されていることから、パワハラはワーク・エンゲイジメントと関連している概念だと考えられています。先行研究をベースにすると「利己的で」「他者への共感性を欠く」「他者を尊重する姿勢を欠く」人物が、職場で高い地位を得ると、パワハラの加害者になりやすいとされています。また、自分の怒りや不安といった感情を自覚・制御できない人ほど、パワハラの加害者になりやすいとも考えられることから、この研究では、上司から部下への関わり改善に着目したプログラムを構築しました。特に、管理職自身の「パワハラ認識性の向上」「怒り感情の自覚や調整力」「相手の視点に立つ姿勢や共感的態度の習得」を目指し、パワハラ教育だけではなく、アンガーマネジメント、アサーション、マインドフルネスといった手法を取り入れています。
筆者らはこのプログラムを管理職が受講することで、職場のパワハラを抑止しワーク・エンゲイジメントの向上に寄与するかどうかという効果を検討しました。
この研究のプログラム対象者は、ある製薬会社に勤務される管理職の方でした。ある企業の管理職という点からも、研究のサンプルサイズは限られますが、プログラムの開発と、そのプログラムの介入効果の研究として、意義のあるものだといえます。
※この研究のプログラムの詳細はこちらから

■おわりに
この研究は1つのプログラムの実施で、パワハラのネガティブ効果の抑制に加え、ワーク・エンゲイジメントの向上というポジティブ効果が期待されるという内容でした。日頃から組織開発施策に関わると、パワハラ防止施策とワーク・エンゲイジメント向上施策は、別個の施策として扱われことが多いのではないでしょうか。この論文が、1つの施策で2つの効果を得ることができる、という人事施策を考える上での新たな気付きになれば幸いです。

(紹介研究)
小林百雲子・山口裕幸・天野昌太郎・池田浩・入江正洋(2024). 職場パワーハラスメントを防止し、ワーク・エンゲイジメントの向上を導く効果的なアプローチの検証―組織開発を目的とした管理職向け短期介入プログラムの開発,産業・組織心理学研究,38(1),15-34.

関連ページ)
産業・組織心理学会サイト

”Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報

新しい年の初めに心と体のウェルネス3選
過去にご紹介したウェルネスの中から心と体のメンテナンスに役立つ記事を3つ厳選しました。

2月も後半になると花粉症の症状が出始める頃ですね。食習慣を変え、不快なアレルギー症状と大量の薬から解放されて、仕事に集中し、趣味などを思いっきり楽しみませんか。

vol.23 「身体の機能は感情に影響される」に続く内容で、日頃の心の状態(感情)によって身体に良い・悪い影響を与えます。良くない状態になった時に自分を「ご機嫌な」状態にする習慣を見つけることで、心を悦ばせましょう。

「ヘルスリテラシー」は、最近は人事系のカンファレンスでも見られるようになりました。人間の身体・心も車のように日々メンテナンスが必要なのをご存じでしょうか。自分の身体のことを医者任せや放置せず、健康寿命を延ばすスキルを身につけましょう。

Moment of Delight

仕事や人生で大切にしたい一言

「過去と他人は変えられない。 あなたが変えられるのは自分自身と未来だ」
エリック・バーン(カナダの精神科医)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

vol.38 2025/02/20

【発行元】タレンタ株式会社  Work Delight Picks編集室