2023年も残すところ僅かとなってきましたが、皆さんにとって今年はどんな1年だったでしょうか。最近出会った一つの詩を紹介させてください。「ぱさぱさに乾いてゆく心をひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて(中略) 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」厳しくも暖かい茨木のりこさんの詩。物事をどう受け止めるのか、自らの心をどう潤していくのか。目に見える成果だけではなく、自分の内面を振り返り、来年へ向けて心への水やりの準備をしてみるのはいかがでしょうか。-Work Delight Picks編集室より-

-目次ーーーーーーーーーーー
HR最前線
「HR Tech Conference & Expo 2023」レポート(後編)
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報
自分を「ご機嫌」な状態にする習慣
今月のPick Book!
『民俗学がわかる事典』新谷 尚紀編著(角川ソフィア文庫)

HR最前線

「HR Tech Conference & Expo 2023」レポート(後編)
前半に引き続き、今回もHR Tech Conference & Expo 2023のレポートをお伝えしていきます。なお、今回のイベントに同行いただいた株式会社アイデミー Executive Advisorの河野様による記事がHuman Capital ONLINEに掲載されております。(前編/後編こちらもぜひ併せてご覧ください!

拡大するタレントマーケットプレイス、注目が集まる背景
グローバルで人材不足が深刻化し、企業は限られた人材資源をいかに有効に活用するかという課題に直面しています。また、近年はキャリアに対する意識も変化しており、社員の自発的なキャリア開発を支援し、企業内の人材流動性を高めることは、人材の流出を防ぐ観点でも重要と考える企業が増えて来ています。
このような背景から、昨今のグローバルHRテクノロジー業界で急速に広がりを見せているのが、従業員起点で社内異動・副業を促進する「タレントマーケットプレイス」と呼ばれる製品群になります。

「出身地」から見るサービスの特徴
上記のトレンドを踏まえ、周辺領域にいたサービスプロバイダーも、こぞってこの市場に進出してきており、私が今回の展示会で見ただけでも10社以上が「タレントマーケットプレイス」的な機能を提供していました。それぞれを比較することで、サービスの「出身地」毎の特色が見られたので簡単にご紹介させていただきます。

  1. 「ラーニングマネジメントシステム」から派生したサービス
    代表的なサービス:SkyHive

    従来の研修管理・スキル管理機能に加え、従業員側の機能が充実し、自身のキャリアプランの立案などができるように進化してきました。ただ、どちらかというと人材開発・組織開発チームの使い勝手に主眼がおかれており、組織レベルでのスキル可視化、スキルギャップ分析などが強い印象があります。
  2. 「採用管理システム」から派生したサービス
    代表的なサービス:Eightfold, Beamery

    外部からの応募者だけでなく社内の従業員も候補者プールとして活用できるような方向で進化が進んでいます。膨大な応募者情報で培ったスキルマッチ機能が強みで、採用チームが社外・社内問わずスカウトを送り、効率的に空きポジションを埋めていくことに主眼がおかれているように見えました。
  3. ネイティブなタレントマーケットプレイス
    代表的なサービス:Fuel50, Gloat

    「タレントマーケットプレイス」という領域を切り開いてきた草分け的なサービスです。社員一人ひとりの使いやすさを重視した製品が多く、UXが特に洗練されている印象があります。逆に従業員起点でサービス設計されているが故に「管理」的な機能は比較的弱く、別途タレントマネジメントシステムなどの力を借りる場面が必要になるかもしれません。

これらのシステムを導入する際は、上記の特徴を踏まえて、どのエリアを最も重視するのかを明確化した上で検討を進められることをお勧めします。

欧米の人事業界における本質的な変化
最後に本イベントの基調講演の中で語られた欧米の人事業界における「大きな変化」についてご紹介して、今回のレポートを締めくくらせていただこうと思います。

これは著名なアナリストであるジョシュ・バーシンによる予測なのですが、近い将来、欧米企業において「ジョブ型人事」が時代遅れになり、ジョブタイトルに依らず人と仕事が機動的に紐づくような組織構成に移行していくだろうと言われています。(タレントマーケットプレイスによる社内流動性の促進もこの流れを汲むものです)

「ジョブ型人事」(上図左)は人材が潤沢で交換可能だった時代に最適化された仕組みでしかなく、全世界的に少子化が進み、変化も激しい現代において、その都度人を解雇したり雇いなおしたりすることはもはや無駄でしかないからです。

日本国内で「ジョブ型」への移行が進みつつある中、欧米では逆に「メンバーシップ型」に近いシステムが形成されつつあるのは何とも皮肉な話です。ただ、一見同じように見えるシステムでも、構成員一人ひとりに求められる自律性が大きく異なる点には注意が必要です。(人事異動が会社主導である日本型人事制度とは、パワーバランスが真逆)

このような組織では、マネジメント層に求められる役割もまた大きく変わり、会社を形作る「人」をいかに活性化させ、生産性を高めていくかが重要な経営課題になっていきます。それに伴い、必然的に人事部が担う役割もより戦略的なものに変化していくでしょう。

このような変化を下支えするためにHRテクノロジーもまた更に進化していきます。今年は少々肩透かしだった生成AIの利活用も来年は更に発展することが予想されます。気が早いですが、来年のHR Tech Conferenceが今から楽しみです。来年のレポートにもどうぞご期待ください。

”Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報

自分を「ご機嫌」な状態にする習慣
前回のWork Delight Picks「身体の機能は感情に影響される」で、お伝えした【自分をご機嫌な状態にする】ですが、具体的にどんなことをすれば良いのでしょうか。
自分をよろこばせる習慣(田中克成著/すばる舎)にあるコツをいくつかご紹介いたします。

「コントロールできることをコントロールする。
 コントロールできないことはコントロールしない。」

まず「自分をよろこばせる」とはどんなことなのでしょうか。自分が「幸せ」な状態にすることで、自分の内側から湧いてくる、自分の心のよろこび「悦る」こと。自分以外の外側から「よろこべる何かがやってきたときに湧いてくる感情は「喜び」であって、こうしてほしいなど相手に期待したり、期待通りにならないと裏切られた感情になり、コントロールできない出来事で感情が振り回されてしまいます。

 喜ぶ:コントロールできない(外発的動機)
 悦る:コントロールできる(内発的動機)

「自分の心が悦ぶ時間を持つ。」
仕事や家庭、友人などの社会的活動の中では様々なことがあり、思うどおりにいかないことも多く、自分の感情は置いてきぼりになりがちです。1日のはじめや終わりに自分の心が悦ぶ時間を持つことで、モヤモヤやストレスは軽減され、リフレッシュすることができます。料理が好きであれば、料理に向き合い、その作業に没頭する。没入することで目の前のことだけにフォーカスし、脳が明日の準備や今日の失敗など心配や不満などあれやこれやを考えるマルチタスクからシングルタスクに切り替わることで、頭がすっきりします。

「大事なことは、習慣を続けることではありません。自分の悦びを探し続けることです。」
自分が悦ぶことは、その時の状況や興味、関心、体調によって変わっていくものです。料理が好きでも、どうしてもやる気が出ないときに習慣だからと一生懸命料理をしても心から悦ぶことは出来ません。また、無理にやっても余計に疲れてしまうこともあります。逆に多少疲れていても好きなことをする時間を取ると元気になることはありませんか。その時、自分の心が悦ぶことは何か、自分で見つけることが大切なのです。

私は、10年ほど前にお花屋さんのフラワーレッスンに参加してから、レッスン中の目の前にあるお花に向き合う時間が下に向きがちな気持ちを引き上がり、レッスン後はとてもすっきりして、レッスン前のイライラやストレスを忘れている、またはたいしたことないと感じるようになっていました。またブーケが可愛く束ねられた時に先生が褒めてくださると、仕事の後のレッスンで夜遅い時間に終わって疲れていても、「明日も頑張ろう」と思えたのです。

継続することが苦手ですが、このフラワーレッスンは、今でも参加しています。それは、季節やレッスンのテーマだったり、同じテーマでもその時に出会うお花や内容が異なるからだと思います。先週もクリスマスのキャンドルアレンジメントのレッスンを受け、出来上がったアレンジメントを眺めたり、ふと感じる針葉樹のフレッシュな爽やかな香りで、心が悦ぶ瞬間があります。

あなたの心が悦ぶことはどんなことですか?

今月のPick Book

『民俗学がわかる事典』
新谷 尚紀編著(角川ソフィア文庫)

毎年、正月になると、祖母の家から段ボールいっぱいに詰められたお餅が届いた。
そして、そのお餅を消費すべく、年明けの食卓はお餅一色になる。
おしるこ、お雑煮、磯辺焼き。おしるこ、お雑煮、磯辺焼き。
終わらないお餅のオンパレードに、子供の頃、そもそもなぜ正月にお餅を食べる風習があるんだろうかと、やり場のない思いを抱いた。

実は民俗学では、この正月に餅を食べるという文化については、様々な考察がされてきたという。
そもそも、平安時代中期の『源氏物語』には「歯固めの祝ひして、もちゐかかみをさへとりよせて」とあり、「歯固め」をして長寿を願うためにお餅が食べられていたことが窺い知れる。また、室町時代の『壒嚢鈔』には、「餅は福の源なれば、福神にさりける故に衰へけるにこそ。福の体なれば、年始にもてなすべし」とあり、正月の餅が福をもたらす福神であると考えられていたことが分かる

このように、古くから日本人は正月に餅を食べる習慣があったのだが、実は逆に、正月に餅を食べることを禁忌にしている文化も日本全国に点在している。
このような文化を「餅なし正月」と呼んだりするのだが、この「餅なし正月」を研究したのが民俗学者の坪井洋文である。
彼は、餅を食する文化に象徴される稲作文化に対し、芋や雑穀を食する畑作文化の存在を唱え、日本文化の多元的な側面に光を当てた。

本書では正月のお餅の他にも、初詣や節分の豆まきなど、私たちの伝統的な文化の成立した由来や経緯を扱っている。
一見不合理で、古臭く感じる習わしも、そこに潜む人々の想いとそれが糾える縄のようにして生まれた歴史を知ると、すこし尊く感じる。
来年も、お餅を食べようと思う。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Work Delight Picks vol.23
HR最前線
「HR Tech Conference & Expo 2023」レポート(前編)
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報 身体の機能は感情に影響される
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今月のPick Book! 「他者と働く─「わかりあえなさ」から始める組織論」 宇田川 元一著(NewsPicksパブリッシング)

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今月のPick Book! 「それでも食べて生きてゆく 東京の台所」 大平 一枝著(毎日新聞ウェブマガジン)