work Delight Picks

まだ暑さも残る頃となりますが、いよいよ鈴虫も鳴き秋に近づいて参りました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
自然には、ある時期が来たら芽を出して収穫の季節となると実をつけるという、一定の成長の時間があります。その中にどれくらい時間を掛けた太陽の恵みと水や土の栄養分が詰まっていることでしょう。現代ではAIで時間を短縮できる便利な時代となりましたが、結局はどれだけ心を注げたかが目に見えない味わいとなるのだと感じています。-Work Delight Picks編集室より-

-目次ーーーーーーーーーーー
HR最前線
生成AIの時代に人事部はどう対応すべきか?
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報
新しい栄養学「ホリスティック栄養学」とは
今月のPick Book!
「それでも食べて生きてゆく 東京の台所」 大平 一枝著(毎日新聞ウェブマガジン)

HR最前線

今年の夏休み、全国の小学生はAI(人工知能)の話題に翻弄(ほんろう)されたのではないでしょうか。学校からは「AIを使った読書感想文を提出してはいけない」と言われ、一方で「自由研究を助けるAIサービス」がTVニュースで紹介されている。この状況に保護者の方々は「一体どうすれば良いのか」と大変戸惑われたことでしょう。

確かに、生成AIは便利です。「赤毛のアン」の感想文を書いてと頼むと、たちまちそれらしい文章を書いてくれます。しかも「小学校1年生レベル」「小学校高学年レベル」「高校生レベル」と指定すると、それぞれ見事に書き分けてくれます。仮に自分が「赤毛のアン」を通読しても、ここまで洗練された感想文を書く自信はありません。

さて季節は秋となり、各社で25卒の採用計画が進んでいることと存じます。半年後には多くの学生がエントリーシート(ES)の作文に悩んでいることでしょう。生成AIの助けを借りる学生が出てきても不思議ではありません。むしろ生成AIを使わない学生が少数派になる可能性もあります。来年はおそらく「生成AIによるES元年」になるでしょう。

このような状況下で、果たして就活学生に「AIを使ったESを提出してはいけない」といえるのでしょうか。仮に使用禁止を打ち出しても実効性があるかは疑問です。学生が生成AIで書いたESを、雇用主の各企業がAI分析サービスで評価・判定するという、悪い冗談のような時代が目の前まで来ているのです。

エントリーシートのような文書は著作者の真正性(間違いなく本人が書いたということ)が厳しく問われます。誰が書いたのか(人なのか、AIなのか)分からないエントリーシートは、もはや存在価値が失われていると言っても過言ではありません。今後エントリーシートは一層形骸化し、場合によってはES廃止に踏み切る会社が増えるかもしれません。

ところで、最近「心の友達」と呼ばれるAIセラピストの調査を行いました。北米で実用化されている青少年のメンタルケアのソリューションなのですが、相談を持ちかけると丁寧で心のこもった返事をくれます。AIに「心」はないはずですが、心遣いはできるのが不思議ですね。それに相談が長引いてもイライラと貧乏ゆすりをすることもありません。

「創造、ひらめき、直感、気遣い、カウンセリング」など、これまで「人」の専門領域だと思われていた分野も、AIが意外に得意だということが分かってきています。人とAIのベストな役割分担のためには、「人にしかできないこと」にフォーカスすることが大切です。特に対話を通じて特定の相手を惹きつけることは、人にしかできない仕事です。

一方、画像診断による皮膚がんの見極めでは、既にAIは皮膚科の専門医レベルに到達していると言われています。囲碁・将棋でも様々な議論はありますが、対戦型ゲームにおいて最善手を見極める能力ではAIが人間に圧勝しているようです。このように「見極め・判定」はAIの得意領域です。この領域は思い切ってAIに任せてみても良いのかもしれません。

AIの判定を人のベンチマークに使う企業も増えています。AIが100%正しいとは限りませんが、対人認知バイアスがない点、外見に惑わされない点、疲れや体調に左右されない点でAIは人間より優れています。AIと人の目線合わせセッションを行うことで、経験の浅い若手面接官をベテラン並みに迅速にトレーニングすることができるのです。

それではAIと比べて人が優れている点は本当にないのでしょうか。実は「忘れることができる」というのは人の優れた点です。「細かい話は適度に忘れて、共通する話だけ覚えている」という能力で、専門的には「汎化(はんか)」といいます。汎化能力が高いと、未体験の事象に対してこれまでの学習結果を適用して対処できるようになります。

人間がAIより優れているのは「適当に忘れられること」というのは少々寂しい気もしますが、倦まず、疲れず、イライラせず、細かい点まで正確に見極めてくれるAIは人事・採用分野で人の助けになります。みなさまの会社では、DXやAIについて、どのような使い方を考えておられるでしょうか?一度みなさまの考え方をお聞かせいただけると幸いです。

”Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報

新しい栄養学「ホリスティック栄養学」とは
栄養学と聞くと、どのようなイメージをされるでしょうか?病院食・学校給食などのメニューを考えるカロリー計算するような管理栄養士が日本では主となっています。
食品がもつ栄養素の働きとそれらが人間の健康にどのように関与し、どの食品から摂取するのか研究する学問です。主に管理栄養士を養成するための分野です。日本で主体となっている栄養学は、人体を構成する材料やエネルギー源となる炭水化物・脂質・たんぱく質が十分あるか、ビタミン・ミネラルの欠乏状態を回避するためであったり、保健・医療・教育・福祉などの分野での栄養の指導、必要な栄養素(カロリー)のように身体に入れるための栄養素を重視してきました。

しかし、ホリスティック栄養学では、人間の健康を決定づける「細胞の健康レベル」を上げることであり、1人1人の体質や健康レベルが異なることを前提としています。こうした栄養素を用いた肉体次元だけでなく、「心の状態」「魂」という要素をトータル的に対象としています。スピリチュアル・ヒーリングや気功、瞑想法、呼吸法、心理療法、ハーブ療法、運動療法などが有効な療法とされています。スピリチュアルと聞くと多くの日本人は「怪しい」「洗脳」などのイメージが強いですが、ヨガや座禅と考えると受け入れやすくなるかもしれません。

■感情も健康を作る
心の状態=感情(ストレス・怒り・悲しみ・感動・感謝)が身体の健康に影響があることは「健康になる技術大全(林英恵著・ダイヤモンド社)」で書かれています。健康になるには技術(スキル)が必要な時代で、感情も健康になる技術のひとつです。(最先端の科学により、ようやく感情も健康のテーマの1つに入りました!)感情は自然に沸き起こるものですが、これは生まれてからの日々、周りの環境や大人の影響を受け、一瞬一瞬の選択の積み重ねで起こる癖です。怒りやつらいことがあった時に自分もしくは周りを責めたりするのではなく、自分を大事に扱うことが大切です。まず自分が今、何を感じているかを認識することです。なんだかわからないけど、不機嫌な自分も、失敗して落ち込んでいる自分も、嬉しいと感じている自分も、色々考えることが多い時も”今”を認識することが、自分の身体と心が同じ”場所”にいることになり、マインドフルな状態になります。

●ストレスへの対応
ストレス社会である現代では、ストレスに耐えられるかよりは、どうストレスをコントロールできるかというスキルが重要になってきます。同じ出来事でも、ストレスの感じ方やリリースの仕方は1人1人異なります。ストレスフルな状態が続くと”なぜこの仕事は自分がやるんだ?”や”なぜ自分ばかり仕事が増えるんだ!”と不満の感情しか起きません。自分の仕事に関係ないことや次々とやってくるタスクは”今後必要になる要素があるかも”と捉え方を変えるとその業務に対する姿勢や気持ちが変わってきます。その1つ1つの積み重ねで効率やパフォーマンスが上ったり、新たな仕事のモチベーションに繋がります。

自分がストレスを感じたな、嫌な感情が出てきたなとその都度認識し、自分の気分が変わるよう心がけてください。「自分をご機嫌にする」ことを選択していくことで健康習慣を身につけやすくし、体・心の健康レベルを上げることに繋がります。

■健康を考える
健康は生きる上でとても重要なことであるけれど、その方法や意味は人それぞれです。TVやネットで話題の健康法や健康食品など手をつけても効果は皆同じではありません。何か特定の食べ物を食べたり、特別なことだけをすれば良いわけでもありません。自分の体を作るのは自分であり、自分の体や心の状態を確認し、自分の体の細胞が健康になることをする。自分が今、どんな状態か、人生100年時代と言われているこれからの時間をどう過ごしたいか。人それぞれ、環境や置かれている状況など違います。その中で自分がどう生きていきたいか、自分が幸せになる選択をしていくことで少しづつ変化していくのだと思います。未来が見えなくても、未来は今の積み重ねです。どんな未来を過ごしたいか、どんな自分でいたいかワクワクしながら想像し、今、何を選択するか考えることに意識することが大切です。より良い・より楽しい未来を過ごすために。

Pick Book

人事・心理学などの書籍・記事から、編集室のお薦めを解説交えてお伝えします。

「それでも食べて生きてゆく 東京の台所」
毎日新聞ウェブマガジン
大平 一枝著

9月に入り、かるい、爽やかな風が吹き始めました。
夏のジリつくような日差しもやわらぎ、あたりの草木の勢いも、いくぶん落ち着いた気がします。
どことなく秋のしんみりした予感に、久しぶりに鍋料理でもと、ざっくばらんに刻んだ野菜と豚肉をレトルトの鍋の素で煮込み、棚の奥からいそいそと取り出した陶製の取り皿でいただきました。
あっさりめの豆乳ベースに溶けた豚肉の旨味と、素朴な野菜の味わいに、少し汗ばみながらも完食し、すっかり満足した心地で「とはいえ少し季節が早かったかな」なんて考えながら皿を洗っていたら、白い取り皿にうっすら、細い髪の毛ほどのヒビがあることに気づきました。

今回紹介する『それでも食べて生きてゆく 東京の台所』は、市井の人々を訪ね、様々な台所を撮影し、そこに滲む、ひそやかな人生の物語をつづったノンフィクションです。

著者は言います。
「10人の台所には10の物語がある」

時に大切なものを失いながらも、どうにかこうにか自分を収め、繕いながら生きている。
そんな名も知れぬ人々の喪失と再生の物語に触れることで、日々のささやかな幸福とその脆さ、そして人間という儚い存在の奥にある、たしかな生命力を感じ取れるかもしれません。

白い取り皿は、いまは亡き祖母がかつて幼い私を看病した際に、実家に置いていったものでした。
もっと寒さが深まり、身が凍えるような日にはまた鍋をしようと、新しいヒビの入った取り皿を、割れないように気を付けながら棚の奥にしまいました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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