暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。今年は梅雨を感じる時間も少なく、もうすでに夏気分の方が多いのではないでしょうか。暑さで食欲不振になりがちですが、夏バテ予防のためにも栄養素を意識して食事してみるのもよいかもしれません。-Work Delight Picks編集室より

-目次ーーーーーーーーーーー
HR最前線
変化の激しい今、求められる「ラーニングアジリティ」とは?
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報
生活習慣を見直してコレステロール値をコントロール~脂質異常症の改善法~
今月のPick Book!
『脳の大統一理論: 自由エネルギー原理とはなにか』 乾敏郎 著,阪口豊 著(岩波書店)

HR最前線

変化の激しい今、求められる「ラーニングアジリティ」とは?
「ラーニングアジリティ」という言葉は、聞いたことがある方もご存知の方も多いのではないでしょうか。実はこの「ラーニングアジリティ」、学術的にも長年研究されているもので、きちんと定義されたものなんです。本日は、変化の激しい今、より一層求められるラーニングアジリティについて、解説いたします。

「ラーニングアジリティ」の定義
「高度な学習者としてのハイポテンシャル人材(Lombardo & Eichinger, 2000)」という論文によると、「経験から学び、その学びを応用して、新しい条件や初めて経験する条件のもとで、成功裏に業績を上げる能力と意欲のこと」と定義されています。
変化に対応し成果を上げる人材の潜在能力を示す指標として、心理学において20年以上に渡る研究成果が蓄積されている領域です。

ハイポテンシャル人材は「ラーニングアジリティ」が高く、昇格後も成果をあげる
上記の論文では、従前と異なる状況でもこれから成果をあげる潜在能力が高い、即ち「ハイポテンシャルな人材」について研究が行われました。そこで明らかになったのは、変化に対応するのが得意で新しい行動を学び、能力を発揮できる人材の共通因子でした。同じ著者の別の論文でも、昇格後に成果を上げることが出来る人材の共通因子について研究され、「ラーニングアジリティ」の4つの因子として、更にアップデートされました。
この論文の著者であるロンバルト氏とアイヒンガー博士は、実は「70:20:10の法則」を導き出したお二人で、この法則は別名「ロミンガーの法則」、つまり二人の名前に由来しています。また、コーン・フェリーの源流の1つであるコンサルティング会社、ロミンガー社を設立した二人なんです。

「ラーニングアジリティ」を構成する4つの因子
ハイポテンシャル人材に共通する因子とは、以下の4因子と定義されています。
それぞれの論文では4因子について詳細に明記されていますが、本日は少しかみ砕いて解説したいと思います。

ラーニングアジリティ

①メンタルアジリティ:複雑で曖昧な情報も処理する思考と分かりやすく説明する能力
複雑さを受け入れ、様々な視点で問題を検討し、異なる概念に新しい繋がりをもたらすことのできる能力です。曖昧だったり複雑な状況でも物事を深く考え、解決策を見出すことが出来る思考能力というと分かりやすいでしょうか。

②チェンジアジリティ:変化を恐れず実行する能力
変化を好み、新しい選択肢や解決策を継続して模索でき、グループの変革をリードすることに意欲があり実行できる能力を指します。変化への好奇心や熱意などが含まれます。また、自分に対しても変化を受け入れたり好んだりするので、学習意欲や改善欲求が高いとも言われます。

③ピープルアジリティ:人との協調性やコミュニケーション能力
オープンマインドで多様なグループと交流ができ、それぞれの強みや興味・能力を鑑みグループの目的を達成する能力です。他者の立場にたって物事を考えられる能力を含み、人との協調性やコミュニケーション能力のことを指します。

④リザルトアジリティ:どんな状況でも他者を鼓舞し、結果を出す能力
すばやく優先順位を見出し目標を設定し、好況時にも苦境時にも成果を出す能力です。初めての状況に臨機応変に対応できるだけではなく、難しい状況でも周りを鼓舞することができる能力のことを指します。

おわりに
ラーニングアジリティの要素を確認することで、変化の激しい今、必要な意識・行動・結果を包括的にみることが出来ます。採用はもちろん、新たな人材配置や昇格・異動、はたまた自分自身のスキルアップのために、こういった要素を意識することもできるでしょう。
心理学の知見を用いることの一つとして、このように人の見る解像度をあげることともいえます。欧米では当たり前にこういった研究がなされ、実用化が進んでいるのです。まさに、「ピープルサイエンス」ですね。
皆さんもその第一歩として、変化の激しいVUCAの時代でビジネスをけん引すべく、日々の業務時に意識してみてはいかがでしょうか。

”Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報

生活習慣を見直してコレステロール値をコントロール~脂質異常症の改善法~

前回のWork Delight Picksで、コレステロール値の比率(LH比)で脂質異常症の目安をお伝えしました。ご自身のLH比はいかがでしたか?

【LH比の出し方】
LH比=LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値

【LH比の血管内の状態】
1.5以下:きれいで健康な状態
2.0以上:コレステロールの蓄積が増えて、動脈硬化が見込まれる
2.5以上:血栓ができている可能性があり、心筋梗塞のリスクも

■LH比2.0以上ならば生活習慣の見直しを
脂質異常症は”生活習慣病”ですので、今までの生活習慣を見直しすればコレステロール値は改善されます。ただコレステロール値を下げれば良いことではなく、基準値内でLDLコレステロールとHDLコレステロールの差が開きすぎないことが重要です。

LDLコレステロール肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働き。血管中のLDLコレステロールが過剰になると血栓ができ、心筋梗塞などのリスクに。
HDLコレステロール血管壁に溜まっている血液中の余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す働き。

【コレステロール値を正常値にするために】
今までの食事を見直し、より良い食事をすることを意識すると口にするものは変わっていきます。ただ全てを1回の食事で実現させようとすると無理することが増え、継続が難しくなります。できることから始めて、慣れてきたら1つ2つと増やしたり、1日・3日・1週間などご自身に合ったサイクルで取り入れ、習慣化するようにします。

■食事法
・ながら食い(スマホ見ながら、TV見ながら、PC見ながら、仕事しながら・・・)をしない
・食べる量は腹八分目
・良く噛む
・数種類の野菜を食べる
・穀類(玄米、もち麦、アマランサス、キヌア)を食べる
・オメガ3(アマニ油、えごま油、クルミ)を摂る
・大豆製品を食べる
・食物繊維を摂る
・甘い物(スイーツ、ジュース、アイスなど)などはとっておきの物をご褒美

■運動
運動の習慣がない場合は、日常生活でいつもより身体を動かすことを心がけます。
・ランチの後に少し遠回りしてオフィスに戻る
・1~2階の移動は階段を使う
・身体を大きく動かす etc

■自分の主治医は”自分”
今の自分の身体を作っているのは、過去の自分の選択・食べた物でできています。未来の自分もこれからの選択と食べ物で変わっていきます。自分が変わろう!変わりたい!と心から思えば、自然と行動が変わり、少しづつ身体が変化して、ふと”あっ、身体が軽くなっている”や”あっ、アレルギー症状が軽くなっている!”と気づきます。身体の状態は本人にしか感じられないので、自分に関心を持って、変化を観察してみてください。変化が見られない場合は、もう1度何を食べていたかなどを振り返り、他の方法や頻度を変えてみるなど、習慣を見直してみてください。

今月のPick Book!

近頃、急速に発展するAIに注目が集まっています。関連する議論のなかで個人的に興味深いのは、そもそも人間の思考自体がアルゴリズムなので人間とAIには違いがないとする主張です。
たしかに我々の思考は、脳のなかで多数の神経細胞がつながったネットワークを電気信号が伝達することで実現しています。また、昨今のAIの発展には「ニューラルネットワーク」という人間の神経回路を数式的に模したモデルが貢献しています。
この状況を鑑みると、人間とAIに大きな違いがないとする主張にも頷けます。一方で、本当に人間とAIに違いはないのか、そもそも人間はどのような仕組みでものを考えているのか、など様々な疑問も浮かんできます。

『脳の大統一理論: 自由エネルギー原理とはなにか』は、我々の脳の様々な機能が、「自由エネルギー原理」と呼ばれるシンプルな理論で説明できることを解説しています。
「自由エネルギー原理」は、著名な神経科学者カール・フリストンによって提唱されました。それまで、認知や知覚、運動など、脳の機能ひとつひとつの仕組みの理解は進んでいましたが、それらを統一して説明する理論は知られていませんでした。自由エネルギー原理はそれらの機能を統一的に説明するだけでなく、発達障害や精神疾患、そして我々の意識についても説明できるとしています。しかし、この理論は高度な数学を用いるため、正確に理解するのは難しいともされています。本書では、この難解ながら魅力的な理論について、出来るだけ数式を排して説明してくれます。
昨今の状況において我々の関心は、急速に発展するAIへと向けられがちです。しかし、いつの時代も、我々が人間であることに変わりはありません。「不易流行」という言葉もありますが、変化する世の中に対応しつつ、変わらないもの、すなわち我々自身への理解を深めることがますます大切になるのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Work Delight Picks vol.18
HR最前線
パンデミック後の北米におけるタレントマネジメントの課題を知る
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報 脂質異常症は様々な不調や病の入口
今月のPick Book!  植物考 藤原辰史著(生きのびるブックス)

Work Delight Picks vol.17
HR最前線
心理的安全性とは?
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報 メンタルケアに必要な食習慣とマインド
今月のPick Book!  V字回復の経営〜2年で会社を変えられますか〜(日本経済新聞出版)

Work Delight Picks vol.16
HR最前線
生成AIの衝撃、人事の未来はどう変わる?
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報 自分軸で生きるとは~自分自身に誠実に生きる~
今月のPick Book!  お金のいらない国4 ~学校は?教育は?(『地球村』出版)