東京の猛暑日も20日を超える中、各地でリアルイベントも再開されつつありますね。4年ぶりに通常開催された、青森市のねぶた祭りに参加してきました。皆さんも夏季休暇を取得されたり、お出かけされたりしましたか?
長い夏も後半に差し掛かり、早いもので鈴虫も鳴き始めているようです。とはいえまだまだ残暑が続きそうですので、心身ともに、充電する時間も忘れずに取ってくださいね。-Work Delight Picks編集室より-

-目次ーーーーーーーーーーー
HR最前線
「性格」とは何か?〜「ビッグ・ファイブ」理論〜
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報
腸内環境を整える~短鎖脂肪酸が腸のバリアに~
今月のPick Book!
「思いがけず利他」中島 岳志著(ミシマ社)

HR最前線

「性格」とは何か?〜「ビッグ・ファイブ」理論〜
候補者の方とのミスマッチを減らすため、採用フローにおいて「人柄」や「性格」といった側面も重視されている企業様もいらっしゃると思います。
今回は、「性格」の定義や特徴、そしてパフォーマンスとの関係について、アカデミックな見地から解説いたします。

【そもそも性格とは?】
「人格」、「性格」、「気質」など、ふだん我々は性格に関する言葉の違いをあまり意識せずに使用していますが、そもそも「性格」とは学問的にはどのように定義されるものなのでしょうか?
ある専門書によれば、性格とは「人の行動や心の動きに現れる個人差で、時間や状況を超えてある程度一貫しているもの」(太田 2019,、P77)とされています。
また、性格のうち先天的な特徴を「気質」と呼び、後天的な影響も受ける「性格」とは区別します。一卵性と二卵性を比較する「双子研究」によれば、我々の性格のうち、およそ50%が遺伝による影響、もう半分が環境による影響あることが知られています。

【性格はどの程度一貫性があるのか?】
職場でのふるまいと、家族や恋人に見せる言動に違いがある人も少なくないと思います。このように、我々の言動は、状況によって大きな影響を受けます。そうだとするなら、「時間や状況を超えてある程度一貫している」性格など存在するのでしょうか?そもそも、我々が性格に注目する理由は、性格が何らかの予測(将来の行動、パフォーマンス)を与えてくれると期待するからです。もし、性格に一貫性がないのだとしたら、この特徴に注目することには意味がなくなってしまいます。
実はこの「性格の一貫性」については、米国の心理学者ミシェルの研究による「一貫性論争」とよばれる有名な議論がありました。ミシェルの研究は、さまざまな場面における人の行動が、性格検査によって測定された性格から予測できる程度はよくても30%程度であるというものでした。そして、この主張に対して有効な反証できた研究者はいませんでした。
では結局、性格について考えることは無意味なのでしょうか?

【性格はなぜ重要なのか?】
ミシェルによる主張が事実だとしても、性格の重要性は変わらないとする意見もあります。
性格の重要性については、たとえば以下の2点があります。

①性格の個人間一貫性:ある一人の人物に注目したとき、その人物の性格は状況によって変化するように見えます。例えば、結婚式では明るく振る舞う人物が、お葬式では暗く振る舞うというのは自然なことです。では複数人のあいだで比較した場合どうでしょうか?
比較する集団の中で、結婚式で最も明るかったAさんは、お葬式でも最も明るく振る舞う、というように、状況によらない複数人間の相対的な傾向を「性格の個人間一貫性」といい、我々の性格にはこのような一貫性があると考えられています。

②日々の行動の積み重ね:ひとつひとつの行動については、状況によって大きく影響されながらも、その行動を繰り返すことによって、長期的に意味のある傾向が見いだされるということが、いくつかの研究でも実証されています。また最近、人の長期的な健康や仕事、人生での成功などが性格測定によって予測できるという研究もでてきています。

つまり、一つ一つの場面においては人間の行動や振る舞いに対する性格の影響は限定的ですが、集団内での比較や、より長期的なスパンでの振る舞いやパフォーマンスの予測には、「性格」というものが重要であると言えます。

【2種類の性格理論】
では、そのような「性格」はどのような理論にもとづいて研究されているのでしょうか?
心理学には、大きく分けて2種類の性格理論があります。
ひとつは類型論と呼ばれるものです。類型論は、人の性格をタイプ別に分類したもので、ある人物の特徴が直感的に分かりやすいという長所があります(性格理論ではありませんが、血液型占いをイメージされると分かりやすいかもしれません)。
もうひとつは、特性論と呼ばれるものです。特性論は、人の性格をいくつかのパラメータで表現したもので(たとえばレーダーチャートで表現するなど)、一人一人の性格を詳細に表現できるという長所があります。
類型論がヒポクラテスの四気質説など、より古くから存在していたのに対し、統計手法や測定法などを取り入れた特性論は比較的近年発達してきました。

【ビッグ・ファイブとは?】
特性論のなかでもっとも有名な性格理論が「ビッグ・ファイブ理論です。
「ビッグ・ファイブ」理論は、1990年代に米国の心理学者ゴールドバーグ氏が提唱した、人の性格が5つの因子の組み合わせで表現できるとする学説です。
現在広く利用されているモデルによると、人の性格は「開放性」「誠実性」「外向性」「調和性」「神経症的傾向」という5つの因子で表現されます。この5つの因子は、辞書にある何万もの性格に関係する言葉に対して、統計的な処理(因子分析)をした結果、最後に残った5つの言葉だとされています。

【性格とパフォーマンス予測】
ビッグ・ファイブは心理学の領域で最も信頼性の高い性格理論として注目され、それぞれの各因子と職業適性や入社後のパフォーマンスとの関係など、ピープルアナリティクスの観点からも多くの研究が進んでいます。一般的な各因子の特徴とパフォーマンスとの関係は以下になります

・「開放性」:一般的に「開放性」が高い人は、好奇心が強く、新しいスキルや知識の習得への関心が高いとされています。また、想像力や発想力に長けているため、企画職やアイデアが求められる職種に向いているとされ、非定型業務の業績などと相関があるとされています。 
・「誠実性」:「誠実性」が高い人は、真面目で良心があり、規律正しく、約束したことをきちんと実行する傾向があるとされています。研究によると、多くの職種で入社後のパフォーマンスとの相関がみられる因子でもあります。 
・「外向性」:「外向性」が高い人は、社会的な状況に自信を持って臨み、見知らぬ人とも簡単に打ち解けることができます。研究によると、管理職と営業職におけるパフォーマンスや、リーダーシップに関係があるとされています。 
・「協調性」:「協調性」が高い人は、集団の中でうまく働き、同僚やクライアントと良好な関係を築くことができます。また、営業職において業績との相関がみられるとする研究もあります。 
・「安定性」:「安定性」が高い人は、感情の安定性が高く、一般的にストレスや批判にうまく対処することができます。また、この因子の低さと離職傾向や燃え尽き症候群との間に関係があるとされています。

【終わりに】
心理学者ミシェルの研究にもある通り、我々のふるまいやパフォーマンスに対する性格の影響は限定的です。しかし、平均勤続年数が10年を超える日本のビジネス環境において、性格の持つ影響力を無視することもできません。人を性格によって判断することの限界、そして可能性を正しく理解し、自社にあった方法を見出すことが重要だと思われます。

【主要参考文献】
・『知能・性格心理学』監修 太田信夫 ,編集 浮谷秀一  
・『主要5因子性格検査ハンドブック』村上 宣寛 著 , 村上 千恵子 著

”Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報

腸内環境を整える~短鎖脂肪酸が腸のバリアに~
以前のWork Delight Picks腸内環境を整える5つの習慣消化消化を助ける食事法について3回にわけて、お伝えしました。しかし、消化しただけでは栄養を摂ったことにはなりません。消化した栄養素が体の中に入って、初めて体のために作用するものになります。

・吸収
私たちが食べた物は、口で咀嚼して、食道を通り、胃で消化され、十二指腸で膵液や胆汁の消化液と混ざり、腸へ送り出されます。そして、小腸に運ばれてきて、初めて私たちの【体の中】に栄養素が吸収されます。体の中というのは、腸壁を通り、血液に乗って全身に必要な栄養素を運び、栄養素が取り込まれる細胞です。

・腸壁のバリア
腸管内には、食べた物の中には細菌やウィルスがある場合もあったり、消化しきれなかった食べ物のかけらなどがあります。腸管は、これら有害物質など体の中に入ってほしくないものを侵入させない働きがあります。しかし、腸内細菌がうまく育たず弱い腸だったり、ストレスや偏った食事で栄養素が不十分などの理由で腸の粘膜が弱まって腸ですと、腸管のバリアが弱り、腸壁に穴が開き、入ってはいけない有害物質が血液に混ざり、全身をめぐってしまいます。そうすると食物アレルギーや動脈硬化、糖尿病、うつ病など様々な疾患の原因になります。

・短鎖脂肪酸が腸壁を修復
短鎖脂肪酸とは、大腸の腸内細菌で作られる有機酸で、植物繊維を分解・発酵する時にできる物質です。短鎖脂肪酸には、酢酸、酪酸、プロピオン酸がありますが、これらは体内で作ることができないため、日々の食事に取り入れることが必要です。

短鎖脂肪酸を増やす食べ物(右図参考)を積極的に摂り、さらに酢をプラスするとなお効果的です。酢キャベツや酢玉ねぎを多めに作り、食事の付け合わせやサラダに加えると食べやすくなります。もずく酢やきゅうりの酢の物なども取り入れて、バリエーションを増やし、飽きずに習慣化することです。ひとつの食材を食べ続けるのではなく、色々な種類の食べ物を摂ることが大切です。

短鎖脂肪酸を増やす食べ物

※酢玉ねぎの作り方は、Facebook「Holistic Lifestyle~健康でHappyな毎日を過ごすために~をご参照ください。

Pick Book

思いがけず利他
ミシマ社
中島 岳志 著

「利他的である」とか「社会的意義がある」といった文言を、なんとなく「うさん臭いな」とうがった見方をしてしまうことはありませんか?

利他的であろうとすることは一般的には素晴らしいことです。ただ、周囲から「利他的に見られたい」といった願望や、「巡り巡って自分に還ってくるだろう」と期待する気持ちがあったとしたら…それは本質的には利己的だと言えます。

また、自分としては全力で相手を思いやった上での「利他的な行動」だったとしても、相手にとって「ありがた迷惑」になることもありますし、利他を押し付けることが支配的な関係性を生んでしまうことすらあり得ます。

では、本当の「利他」とは何なのでしょう?そんなものはこの世に存在しないのでしょうか?そういった疑問にこの本は応えてくれます。

利他論の研究者によって書かれた本ですが、堅苦しさは全くありません。落語、仏教、果ては宇多田ヒカルの歌詞にまで言及し、様々な角度から分かりやすく利他論の本質をブレイクダウンしてくれているため、スルスルと読み進めることができます。

「人のために働く」ことに悩まれている・モヤモヤされている人事の皆様に、ぜひご一読いただきたい一冊です。肩に入った力が、きっと少し楽になると思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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