vol.26  2024/02/20 発行

work Delight Picks

立春も過ぎ、暖かい日も増えておりましたが、今週はまた寒い日がありそうです。新卒採用部門の皆様におかれましては入社式も控え、年度末に向けて大変お忙しい日々をお過ごしかと存じます。そんな合間にも、心も身体もリフレッシュする時間を忘れずにとってくださいね。
季節の移り変わりに新たな活力や希望を感じ、季節の訪れに合わせて身近な楽しみを再発見してみてはいかがでしょうか。-Work Delight Picks編集室より-

-目次ーーーーーーーーーーー
HR最前線
楠田祐氏/アレン・マイナー氏 対談レポート「日本の会社の抜本的人事改革への道程」
”Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報
細胞レベルで健康になる
今月のPick Book!
「組織の経済学」
伊藤秀史 (早稲田大学教授),小林創 (関西大学教授),宮原泰之 (神戸大学教授)/著(有斐閣)

HR最前線

楠田祐氏/アレン・マイナー氏 対談レポート「日本の会社の抜本的人事改革への道程」

今回は、人事情報専門のインターネットラジオ番組のパーソナリティを担当し、390万ダウンロード達成し、東証プライム企業の人事要員選抜スクール1500人受講卒業者排出している名実ともに人事エバンジェリストであるHRテクノロジーインスティチュート代表の楠田祐氏と弊社社外取締役でもあり、オラクルの初代日本代表を務めたアレン・マイナー氏の対談「日本の会社の抜本的人事改革への道程」の一部を特別に公開いたします。

日系大企業の人事はゼネラリストのままで良いのか?
伝統的な日本の人事は社員一人一人を誰よりも知り、その会社を知り尽くしているゼネラリストの人たち。「人と会社を知り尽くしている」ということは、その会社の知識人として、プロフェッショナルな要素です。そのために、ジョブローテーションを通して現場感を身につける経験も必要です。転籍が多い欧米企業では決して真似できることではありません。だからこそ欧米企業はデータベースに依存する傾向があります。データベースやエンゲージメントサーベイツール等、人事の意思決定にテクノロジーを活用することももちろん重要ですが、テクノロジーは人事に代わることはできません。これからの人事は伝統的なプロフェッショナリズムに加え、最新のテクノロジーから得られるデータを活用することで、より多角的な視点から判断ができます。

日系大企業のCHROのキャリア
日系大企業のCHRO(最高人事責任者)は法学部出身が多いです。それは人よりも法律を好む人が多いということを意味するかもしれません。産業組織心理学(Industrial and organizational psychology)では、人のマインドセットをどうリードするか、組織のモチベーションをどのように高めるかを心理学的な観点から学問として学びます。しかしながら、日本では産業組織心理学のPhDを取得できる大学はありません。一方で海外の企業では、人事のトップは産業組織心理学のPhDを持っている人が多いという事実があります。それは、人材マネジメントやリーダーシップを学んでいることが重要とされていることを意味しています。法律に詳しい守りの人、心理学的に人を見抜く人、哲学を持って全体をリードできる人、全て人事部門に必要です。それぞれの会社の状況下で、どういうタイプの人が人事のトップになるべきなのか、日本の企業は真剣に向き合ってみてはいかがでしょうか。

日系大企業の人事が変えるべきことと失うべきではないこと
失うべきではないことは「長年一緒に働くことのできる仲間」です。長年働いた人が多いほど、安定した基盤の上に人を増やすことができるので組織として強くなります。だからこそ、「仲間と一緒に仕事を行う」というマインドセットは忘れて欲しくないです。2000年代に入りシリコンバレーの一部の企業が、旧来の人をパーツとしてみなし流動性を当たり前とする姿勢から、人を戦略の根幹とみなし、大切にするようになりました。その際に日本企業からピープルマネジメント・組織の安定性を学んだとも言われています。一方で、シリコンバレーの企業はデータサイエンスを同じくらい重要視しています。「データで見抜けること(解析力)」と、「人を見抜き、仲間として仕上げる力(人間力)」。今の世界のリーディングカンパニーはこれら2つを両立しています。日系大企業の人事がデータの解析力の視点を持つためにも、今まで経理部門などにいたデータ解析が得意な人を人事に増やしていくということも良いでしょう。人事の中で多様性を持つことが、日系大企業の人事がいま求められていることなのかもしれません。

”Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報

細胞レベルで健康になる
以前にもお伝えしたこのテーマ(過去の記事:vol.13ですが、私たちの身体の中の最小の生命体“細胞”1つ1つで生命活動が完結しています。その小さな小さな細胞がたくさん集まった内臓や血管、神経がそれぞれの働きを全うさせるために私たちは、日々食事をし、睡眠をとり、運動しているのです。1954年の日本の医療費は2300億円(人口一人当たり24,000円)だったのに対し、2021年の年間医療費は45兆円(人口一人当たり358,000円)を超えています。約70年前よりも医療技術は発展しているのに、食生活も豊かになっているはずなのに、生活環境も良くなっているはずなのに、糖尿病、脳梗塞、心臓病、がん、アレルギー、うつなどの心の病は増加しています。
人間は成長期を過ぎると徐々に機能が落ち、“老い”に向かっていきます。この“老い”は細胞の老化で、この進行と病気の進行は密接に関与されていると言われています。

健康になる細胞の環境を「自分で」整える
細胞の老いが老化を進め、病を発現、進行させるならば、自分の細胞の老いは自分で進行を遅らせることができます。今、特に病気もないし、まぁ少しLDLコレステロールや中性脂肪は高めだけど、経過観察だし…、アレルギーがあるくらいだし。と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、それが“老いであり、健康ではない状態”です。毎日の食や習慣のあなたの選択”で、老けさせもするし、健康にもなります
食事は、家族が作っているのであれば、休日に自分で作ってみたり、平日のランチのメニューを変えてみたりすることもできます。「毎日、毎食必ず健康的な物を!」と決めてしまうと長続きしなかったり、無理が出てきます。新陳代謝によって身体の細胞が入れ替わるのには、早いところで胃の粘膜が3日程度、骨は少しずつ入れ替わり数年かかります。身体の変化を感じるほどに入れ替わるのには、ある程度の時間がかかります。継続して習慣としていかなければなりません。今までの習慣の積み重ねで、今の身体ができているのです。

細胞から健康になる習慣とは
杏林予防医学研究所の山田豊文所長が提唱している「細胞環境デザイン学」による食事術や生活術は、細胞環境を改善し、健康な細胞を増やすことで、病気を防ぐ力も治す力もつけることができると言われています。

「細胞環境デザイン学」をベースにしたキーワード
・抗酸化機能を高める
・ミネラルバランスを整える
・細胞膜の脂質の質を高める
・ファスティングで臓器の休息を

それぞれのキーワードの内容は次号で詳しくお伝えいたします。
その前に、前回の記事を読んで、細胞の働きを再度確認しておきましょう。
前回の記事:vol.13細胞レベルで健康になる

【参考】
厚生労働省「令和3 (2021) 年度 国民医療費の概要/1.国民医療の状況」
「食」を変えれば人生が変わる-山田豊文著(河出出版)
veggy vol.90「不老腸寿」

今月のPick Book!

人事・心理学などの書籍・記事から、編集室のお薦めを解説交えてお伝えします。

「組織の経済学」
伊藤秀史 (早稲田大学教授),小林創 (関西大学教授),宮原泰之 (神戸大学教授)/著
(有斐閣)

「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。」

とかくに人の世は住みにくい、と続くこの有名な文は、夏目漱石による小説『草枕』の冒頭の一節であるが、この一節にひとりの組織人として共感する方も少なくないのではないか。

パワハラ、会社ぐるみの不正問題といった世間をにぎわす大事件から、誰にも知られず、ひとり心に蓋をして済ませてしまうような些細なものまで、企業をはじめとする組織では、大事小事を問わず様々なしがらみがあるのが常である。

では一体、住みにくい世を住みやすくするには、いや、良い組織をつくるにはどうしたらいいのだろうか。上の一節にならえば「情に働き、智に棹さす」、つまり情熱と理性のバランスが大事、となるのかもしれないが、言うは易く行うは難しである。

特に人事や組織の世界は、さまざまな理論や意見が跳梁跋扈しており、「棹さす」には捉えどころがないという点で、そして一度ハマったら抜け出せないという点でも、まさに”沼地”といった印象を受ける。

しかし、そんな沼地にあって、一つの岩盤たりえるのではないかと思うのが、今回紹介する『組織の経済学』である。本書はその名の通り、「組織の経済学」と言われる経済学の一分野を扱った教科書である。組織の経済学は、企業組織を想定して、ゲーム理論などの手法を応用することで、組織が直面する諸問題を分析する学問である。そもそも経済学は、市場での取引に焦点を当て、市場に参加する企業の内部についてはある種のブラックボックスとして扱ってきた。しかし、ゲーム理論などの経済学の発展に伴い、とくに1980年以降、組織内部で行われる情報のやり取りやコミュニケーションについても分析の対象となり、研究が進められてきている。本書『組織の経済学』では、そんな組織に関する最新の理論と分析について、微分・積分といった高度な数式は使用せずに、平易ながら網羅的に解説している書籍である。

第Ⅰ部で組織で発生してしまう問題として、各社員が個人的な利益を追求した結果、組織にとって最悪な結果になるという「ジレンマ」という状況や、分業をすることで「無駄」が発生してしまうという「コーディネーション問題」、また組織運営の根幹にもかかわらずなかなか形成されない「信頼」について扱われる。第Ⅱ部では、そういった問題をどのように解決するのかについて、「組織の設計」という観点や、長期的な関係によって維持されるような暗黙の「関係的契約」、主観的な評価が入り混じるような「情報の戦略的な伝達」といった観点から解説される。また、第Ⅲ部では「意思決定プロセス」、「企業文化」、「リーダーシップ」など、組織によって異なるような組織のソフトな側面についても分析される。

冒頭紹介した『草枕』では、「住みにくい世」を住みやすくする手段として、「芸術」が挙げられている。それは芸術家が、生々しい世間を生きる当事者でありながらも、作品を生み出すためにそれをどこか客観的に捉え、苦しみや生きづらさといった感情に流されるだけではない、ある種の傍観者でもあるからだろう。

「組織の経済学」もまた、組織人でありながら、時に抗いがたい組織の空気や文化に押し流されないように踏ん張る人の、一つの「芸術」になるのかもしれない。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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