work Delight Picks

新年度が始まり、環境の変化があった方も多いかと思います。また、今年は既に夏日を記録し、まるで初夏のような気温に驚いています。そんな外的環境の変化が激しい日々は知らず知らずに体・心に負担がかかっています。自分が「ご機嫌」に過ごすことは何か、少し考えてみませんか?-Work Delight Picks編集室より-

-目次ーーーーーーーーーーー
HR最前線
生成AIとAIエージェントが変える人事の未来
今月のPick Book
仕事の未来×組織の未来新しいワークOSが個人の能力を100%引き出す
Moment of Delight
仕事や人生で大切にしたい一言

HR最前線

生成AIとAIエージェントが変える人事の未来

昨年来、人事業界でも「生成AI」の活用が急速に進展しています。生成AIを活用したソリューションが次々と発表されており、人事の世界にも変化の波が押し寄せています。
本稿では、生成AIの歩みと現在地、そしてこれからの可能性について紐解いていきます。

■生成AIの歩みと現在地
ここ数年で急速に進化した「生成AI」は、人工知能が文章・画像・音声などのコンテンツを“生成”することを可能にする技術です。その基盤となったのが2010年代に登場したディープラーニングであり、2020年のGPT-3の登場により自然言語処理技術が大きく進歩しました。
そして2023年以降、ChatGPTやClaudeなどの対話型AIが一般利用にも広がり、ビジネスの現場では業務効率化やクリエイティブ支援などでの導入が急増しています。

また、生成AIは人事分野においても導入が進んでいます。昨年ラスベガスで開催された世界最大級のHRテックイベント「HR Tech Conference & Expo」では、生成AIを活用したソリューションが多数紹介されていました。たとえば、AIが自動で候補者とやり取りをし、面接官の予定調整も含めて採用面接のスケジューリングを自動化する機能や、社内チャットツールのデータを分析して従業員のスキル情報をリアルタイムで更新する機能などが挙げられます。

■生成AIのこれから:AIエージェントとは?
生成AIの進化とともに注目されているのが「AIエージェント」です。これは、単に情報を生成するだけでなく、ユーザーの意図を理解し、複数のタスクを自律的にこなすAIのことを指します。たとえば、会議の議事録を取りまとめ、関連資料を探し、次回のアジェンダを提案するといった一連の流れを一人の“仮想アシスタント”が担うようなイメージです。

AIエージェントは、指示された内容だけでなく、過去のやり取りや状況を踏まえて“気を利かせた”提案が自律的にできる点が特徴であり、今後の業務の基盤となる可能性を秘めています。

今後、AIエージェントは人事業務においても、あらゆるシーンでの活用が見込まれます。

■人事領域における活用
人事領域では、生成AIやAIエージェントの導入がさまざまな場面で進んでいます。
以下、各領域ごとの代表的な活用例です。

  • 採用活動:採用競争の激化を背景に、AIの活用が大きく進展しています。米国では、LinkedInなどのビジネスSNSから求職者情報を自動収集・リストアップする機能、採用市場の動向に合わせた求人票の自動作成、候補者とのやり取りの自動化といった、採用業務の効率化が進められています。一方、日本では、ビジネスSNSの利用率が比較的低いこと(=利用できる公開情報が限られていること)や、職種ごとのジョブ・スキル定義が曖昧なこともあり、AI活用は米国に比べて遅れています。しかし、今月、ビズリーチが求人票の自動作成機能を発表するなど、今後は日本でも徐々に普及が進むと見込まれます。

  • 人材教育・育成:入社後のオンボーディング支援や、社員のスキル・キャリア志向に応じた育成プラン、パーソナライズされた研修プログラムを自動提案する学習管理システム(LMS)が米国では登場しています。日本では特に人材育成の領域において、例えば多面サーベイ(360度評価)から得た定量データやコメントをもとに、個別に成長アドバイスを記載したレポートを配信するサービスなどが現れています。

  • 人事評価・1on1支援:人事評価といったセンシティブな領域でも、評価の客観性確保やバイアス排除を目的に、米国ではAI活用が進められています。たとえば、入社90日以内の新入社員の業務パフォーマンスを評価し、マネージャーにレポートを配信するサービスがあります。日本では、マネージャーによる1on1ミーティングを支援するため、Slackなどのコミュニケーションツール上のやり取りをもとに業務内容を自動収集・整理するサービスが登場し始めています。

  • お問い合わせ対応:社内情報をもとに、お問い合わせに回答する仕組みは、現在のAI活用において代表的な例のひとつです。米国では、給与や福利厚生に関する問い合わせに、チャットボットが自動応答するサービスが登場しています。日本でも、電話やメール、Slack・Teamsといったビジネスチャットを通じた問い合わせ対応にAIを活用するサービスが登場しています。

■最後に
生成AIをはじめとするテクノロジーの導入は単なる技術革新ではなく、「人と人との関わりを深め、業務の質を向上させる」ことを目的としています。企業が「求める人材像」や「目指す組織のあり方」を明確にし、適切なソリューションを活用することで、優秀な人材との出会いや社内コミュニケーションの活性化が期待できます。

今月のPick Book

ビジネス本などの単行本から、編集室のお薦めを解説交えてお伝えします。

仕事の未来x組織の未来
新しいワークOSが個人の能力を100%引き出す
ラヴィン・ジェスターサン/ジョン・W・ブードロー 著
マーサージャパン 監訳(ダイヤモンド社)

本書『仕事の未来×組織の未来』は、変化の激しいAI時代に適応する新たな組織論を展開しています。昨今、欧米企業の間でジョブ型雇用が「遺物」と言われるようになってきましたが、その背景には、以下のような事業・就労形態の変化があります。

  1. ビジネス環境の激変によって固定的な「ジョブ」定義が陳腐化

  2. AI・自動化の進展により人間とAIの新たな「協業モデル」が必要となった

  3. 社内副業やギグワーカーなど働き方の多様化

これらの変化により、従来欧米企業で使われていた「ジョブ中心」人事システムでは企業に求められる敏捷性と柔軟性を実現できなくなっています。

本書で紹介されている新しい「Work OS」では、ジョブに過度に依存せず機動的に役割分担を行うため、ある意味「メンバーシップ型」の働き方と似ていると言えます。一方、業務アサインメントを最適化するために、業務の分解・精緻化とスキルの可視化を徹底的に行う点が決定的に異なります。また、業務の分解・精緻化は、人とAIの最適な役割分担の検討を進めるためにも非常に役立ちます。

日本企業では、欧米企業ほど苛烈な短期成果主義ではないため、上記ほど厳密な定義がなくても、チーム内で相互フォローしながら業務遂行ができることが多いでしょう。その反面、業務が暗黙知化されがちで、効率化・自動化が妨げられていることも事実です。生成AI技術が目覚ましい進化を遂げる中、本書が提案する業務の分解・精緻化は、ホワイトカラー業務の生産性改革という意味でも見習うべき点が多いように思います。

欧米企業におけるトレンド・ユースケースの紹介が中心の書籍となりますが、上記のように日本企業においても取り入れるべきエッセンスが多くあります。人材活用の未来に関心をお持ちの人事担当者の方は、ぜひ一読の上、自社におけるアクションについて考えてみてはいかがでしょうか。

Moment of Delight

仕事や人生で大切にしたい一言

「Long live all the magic we made.
(私たちが起こしたすべての奇跡に、万歳)」
Taylor Swift – ♪Long Live より

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

vol.39 2025/04/30

【発行元】タレンタ株式会社  Work Delight Picks編集室