8月お盆休みはいかがお過ごしでしたでしょうか。私は仏壇に祖父母が好きだった食べ物をお供えさせて頂きました。皆様の地元ではどのような風習がありますか?さて、故人を大切にし、先祖を敬う風習は日本などアジアで独特な風習ですが、隣人愛を大切にし、横のつながりを大切にする西洋に対し、縦の繋がりを大切にする文化が日本にはあります。先祖をずっと縦に辿っていくと、どこに行きつくのか想像ができませんが、太古の時代、私達の先祖は太陽を拝む太陽信仰がありました。太陽もそういえば縦に昇るなと、Work Delight Picksのロゴに気づかされた今日この頃です。-Work Delight Picks編集室より-

-目次ーーーーーーーーーーー
HR最前線
AI導入の法務・倫理・社会的課題(ELSI)について
Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報
免疫力のバランスを整える
今月のPick Book!
失敗の本質 日本軍の組織論的研究  戸部良一/寺本義也/鎌田伸一/杉之尾孝生/村井友秀/野中郁次郎 著(中公文庫)

HR最前線

AI導入の法務・倫理・社会的課題(ELSI)について

■日本IBMの労使紛争の和解
8月10日の日経新聞Web版に、日本IBMの労使紛争の和解に関するニュースが掲載されました。同社が人工知能(AI)による人事評価を行なったことに対して、同社従業員が加盟する労働組合が会社側にAIの評価ロジックの詳細説明を求めていたという件です。仲裁にあたった東京都労働委員会によると、同社のAI評価はスキル、パフォーマンス、ポテンシャルなどの分野に分かれ、学習データは40項目以上に及ぶとのことです。報道を読む限り今回の和解はAIの評価項目を開示することで決着したようです。

■AIの説明可能性と解釈可能性
このニュースを聞いて、雇用・人事分野におけるAIの説明可能性(Explainability)と解釈可能性(Interpretability)のあり方について一つの答えが出たと思いました。AIモデルが予測を返す仕組みを明らかにすることを解釈可能性といい、AIがなぜその予測を返したのかを説明できることを説明可能性といいます。推測ですが、個々人の給与査定のアルゴリズムの開示を要求しているのではなくAIの評価項目を開示した上で上司が従業員に査定内容を説明する機会を設けることで説明可能性を確保したものと思われます。

■AI導入の社会的課題
AIなど最新技術を導入する際の倫理・法務・社会的課題は“Ethics Legal Social Issues” の頭文字からELSIと呼ばれています。具体例として2018年にAmazonがAI履歴書分析システムで男性優位の評価を行っていた件はよく知られています。これは過去の合格者に男性向けスポーツの経験者が多かったため男性優位のバイアスを組み込んでしまったという初歩的なミスでした2022年にはドイツ製AI動画面接システムの応募者のボディランゲージや服装、背景などでスコアが変わってしまう欠陥に関する報道もありました

■ワークデイ問題
最近の事例として米国の人事ソフトウェア大手Workday Inc.に対して黒人男性が起こした訴訟をご紹介します。この男性はWorkday導入企業100社に応募して全社不合格だったことからWorkday ATS(採用管理システム)の履歴書AI審査機能が「黒人、40歳以上、障がい者、うつ病傾向」を不当に低評価していると訴えています。また応募書類を入力して1分以内に不採用通知が届くのは選考プロセスをAI任せにしている証拠だとも主張しています。今後米国の連邦地裁がどのような判断を下すのか注目されます。

■過去の事例では何が問題だったのか?
当社に合格しやすい人を選んで欲しいという根強い希望がありますところが過去の合格者情報をそのまま教師データ化すると周辺情報まで取り込んでしまう可能性があります。例えば、過去の内定者の大半はスーツを着ていた。だからスーツを着ている候補者は内定者に近い。過去の内定者は部屋が整理整頓されていたので、部屋の汚い候補者は内定者から遠いという具合です。これらのバイアス要素は時代や環境の変化、職務能力との関連性を踏まえて慎重に除去する必要があります。また最終判断をAI任せにしていると誤解されないようにすることも大切です。

■AIの社会的課題の解決に向けて
AIの社会的課題はAIプロバイダが単独で解決できるものではありません。実装を行なっているお客様と共にノウハウを蓄積していく必要があります。そしてAIと人がそれぞれの得意分野を活かし、適材適所で役割分担していることを社会に示していく必要があるのです。今後わたしたちは継続的にAIのELSIについての事例をご提供してまいります。みなさま方からもぜひご意見をいただけると大変ありがたく存じます。

”Work Happy!”を実現する最新ウェルネス情報

米国の最新ホリスティック栄養学に基づく心と体の健康情報をお伝えします。

免疫力のバランスを整える

新型コロナウィルスのパンデミックを機に【免疫力】が注目されるようになりました。“免疫力を高めること”は大切ですが、高すぎてもいけません。上がり過ぎず下げ過ぎない中間のところに持っていくことが重要です。また免疫のバランスには、食事だけではなく、睡眠、ストレスに関連する自律神経を整えることが良い影響を与えます。

■オメガ3を積極的に摂る
現代の日本人は、人体に必要な必須脂肪酸の多価不飽和脂肪酸のオメガ3の摂取量が少ないことで、体に炎症を起こすオメガ6が優位になっています。オメガ3は体内で生成できないので、日常の食生活で摂取する必要があります。オメガ3は植物の葉(ブロッコリー、ケール、小松菜など)や植物性プランクトンを餌にしているイワシ、サバ、ブリ、サンマ、アジなどの青魚に含まれています。ただ同じものを食べ続けるのではなく、旬の野菜やいくつかの種類の食材を食べるようにしましょう。

■質の良い睡眠
日常の生活だけでも交感神経が優位になっています。睡眠によって副交感神経を優位にしてバランスを整えることが大切です。睡眠は体のお掃除の時間といわれており、体外に老廃物や有害物質を排出する時間をおろそかにしないよう心がけましょう。

■ストレスは放置しない
現代では「ストレスは万病の元」と言われています。ストレスによって免疫力が低下することにより、循環器系や消化器系に悪影響を与えたり、感染症を引き起こしやすくなります。気づかないうちにストレスを感じていることもありますので、日頃からストレス解消できるように自分ファーストの時間を取りましょう

人間に本来備わっている「ホメオスタシス(恒常性)」という機能によって、外界がたえず変化していたとしても、体内の状態(体温・血液量・血液成分など)を一定に維持できています。ホメオスタシスが崩れると交感神経と副交感神経の切り替えがうまくできず、自律神経が乱れてしまいます。起床する時間を一定にし、規則正しい生活を心がけましょう。

今月のPick Book!

ビジネス本などの単行本から、お薦めの解説を交えてお伝えします。

失敗の本質 日本軍の組織論的研究
戸部良一/寺本義也/鎌田伸一/杉之尾孝生/村井友秀/野中郁次郎 著(中公文庫)

社会人になって少し経って、歴史書を愛読する経営者が多いことを知りました。
おそらく経営者の方々は、時代の節目におけるリーダーや改革者の成功&失敗談から、戦略論や組織論やリーダーシップ論を学んでいるのだろうと思っていましたが、当時の私は大組織の一員として現場仕事での成果創出に明け暮れており、そのことを理解するのは時期尚早でした。

この本は、日本を代表する経営学者である野中郁次郎先生ほか複数の研究者による共著で、第二次世界大戦における日本軍の敗北を組織論の切り口で分析したものです。1991年に出版された書籍ですが、私はこの本をキャリアの転機が訪れた2008年に購入しました。

本書において、日本軍の失敗の本質は「自己革新能力の喪失」にあったこと、また自己革新する組織の原則として「不均衡の創造」「自律性の確保」「創造的破壊による突出」「異端・偶然との共存」「知識の淘汰と蓄積」「総合的価値の共有」が挙げられています。購入当時はほとんど理解できていなかったように感じますが、社会人として経験を重ねる中で理解できる幅が広がってきました。

このような失敗の歴史から学び続けることは私たちの責務なのでしょう。毎年8月のお盆の時期に読み返したいと思いました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

vol.32  2024/08/20発行

【発行元】タレンタ株式会社  Work Delight Picks編集室